アメリカに留学している学生さん、社会人さんなら一度は
「学んだことを活かしてアメリカで働いてみたい!」
と思ったことはありませんか?
もしアメリカで働けたら、その経験は学生さんにとっても社会人の方々にとっても大変貴重な経験になるでしょう。
アメリカで合法的に働くことは、一定期間の教育を受けた学生を対象とした「OPT」を利用することで実現することができます。
またOPTをすでに知っている方は、新型コロナウイルスがOPT取得にどのように影響を与えているかを不安に思っている人が数多くいると思います。
OPTはなくなるの? OPTの許可が下りないって本当? どうしたらOPTで働ける?
結論から言うと、OPT申請のプロセスは通常通り動いています。
ただ、パンデミックによるアメリカの失業率がOPTに大きく影響していることは確かです。
今回はOPTの種類や条件、注意点と、実際に新型コロナウイルスパンデミック下でOPTを取得した私の経験を例に、確実にOPTを取得する方法をご紹介します。
OPTとは?OPTがあればアメリカで働ける
基本的にF-1ビザ(学生ビザ)の学生がキャンパス外でパートタイムやフルタイムで働くことはできません。キャンパス内のライブラリーやカフェで働く(オンキャンパス)ことは認められていますが、オンキャンパスでは正規学生も働いているため、とても狭き門です。
留学生がアメリカで合法的に働くことができる制度がOPT(Optional Practical Training)です。OPTがあれば米国内で週20時間~のパートタイムまたはフルタイムで有給・無給に関わらず働くことができます。
OPTの種類
OPTには「Pre-Completion OPT」と「Post-Completion OPT」があります。
「Pre-Completion OPT」は学期中に働くことが可能、「Post-Completion OPT」は学期後に働くことが可能です。
ただし、PreとPost合計で12ヶ月以内である必要があります。※Postのみの場合、定められたOPT開始日から12ヶ月間働くことができます。
専攻がScience、Technology、Engineering、Mathematicsの学生は「STEM Extension」の対象で、OPTの期間を24ヶ月間伸ばすことができます。ただし過去にSTEAM Extensionを利用したことがなく、受け入れ先企業がE-Verifyプログラムを利用している必要があります。
OPTの仕事内容は専攻(メジャー)に関連した仕事である必要があります。
OPTの条件
OPTに申し込むには以下の条件をクリアしている必要があります。
- F-1で1年間(one full academic year)就学していること
- 学位(准学士号、学士号、修士号)が取得できるようなプログラムを受講していること
- 大学が実施するOPTのワークショップに参加すること
コミュニティカレッジや4年制の大学に通っている学生さんはOPTの条件に当てはまります。その他、大学のプログラムが「one full academic year」であると考えられる場合も申し込み可能です。
実際、私が留学したUniversity of California, Irvine校(UCI)のエクステンションプログラムでは、2つのエクステンション+インターンシップを組み合わせた9ヶ月のコースを修了することでOPTを申し込むことができます。
エクステンションプログラムについて詳細を知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
ここで一点注意ですが、2つのエクステンション+インターンシップでOPTを申し込む場合、OPTの業務内容は2つめのエクステンションプログラムに関連したものでなければいけません。ですからプログラムの組み合わせ方を工夫するのが良いでしょう。
OPTの注意点
OPTの申請には大変複雑なプロセスがあります。OPT申請には大学が開催するOPTワークショップに参加する必要があるので、きちんと参加し知識を深めましょう。
私は実際に申し込むクオーター以前からワークショップに参加し、理解を深めていました。
申請時期にも注意です。
・Pre-completion OPT:ワークショップ&学校側の手続きが終わってから申請
・Post-completion OPT:ワーショップ&学校側の手続きが終わって、プログラム修了の90日前からプログラム修了後60日までの間に申請
Post-completion OPTの場合、1つ前のクオーター開始時にOPT申請手続きを始める必要があります。
プログラム終了後でもいいじゃないか、と思うかもしれませんが、1つ前のクオーター開始時に申請するのがベターです。
なぜならOPTは開始日が定められており、その日から12ヶ月間しか働けません。加えて米国移民局による承認が下りるまでに通常3ヶ月程度かかりますので、申請時期が遅くなればなるほど働ける期間が短くなるのです。
設定した開始日までに職が見つからなかった場合、90日間は職探しをしつつ米国に滞在することが可能です。
OPT申請からEADカード到着までの流れ
OPTを申請して、承認されるとSSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)とEAD(Employment Authorization Document)カードが届きます。SSNとEADカードはアメリカで合法に働くために必要になるカードです。
実際に私が申し込んでカードが届くまでの時間をご紹介します。
【6月12日に卒業後OPTとして働きたい場合】
▼ワークショップ、申請日
4月中旬(1つ前のクオーターが始まってから2週間ほどたったころ)
▼書類準備ののち、発送
5月上旬
▼OPT開始日
8月3日~7日のうちから選ぶ(これは早めたり遅くしたりできません)
▼OPT承認書類、SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)到着
6月中旬
▼EADカード到着
7月中旬
新型コロナウイルスによる廃止の危機
アメリカでの新型コロナウイルスのパンデミックにより、OPTは廃止の危機に遭いました。理由はアメリカの失業率が歴史的な記録になったため、雇用をアメリカ人に優先させ、外国人労働者の雇用を減らそうとしたからです。新型コロナウイルスが留学生に与えた影響についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
議員の一人がトランプ大統領に宛てて「OPT廃止案」を提出したというニュースが流れてから、大学は猛抗議をしました。もしOPTが廃止されれば留学生が減り、大学は大きな損失を負うからです。
過去の統計からして、OPTとして働く優秀な外国人労働者が米国に与えた利益は多大なものであり、同時に、外国人労働者の採用によってアメリカ人の雇用が脅かされたことはないと様々なメディアが報じました。
結果的に、大学の抗議や過去の統計によりOPT廃止は免れました。
トランプ大統領政権下で過去にもOPT廃止案が出ていましたが、今回がもっとも可能性が高く、緊迫していました。
コロナ下でOPTを確実に取得する方法
新型コロナウイルスパンデミックはまだまだ収束しておらず、これからもOPT廃止の危機に置かれる可能性は高いです。そんな中、確実にOPTを取得する方法は、申請の細かい規則を守り、早めに申請することです。
実はこれは通常時のOPT承認のコツとさほど変わりません。
OPT申請時は細かい規定をクリアしていないだけで許可が下りず、1から申請をやり直す必要があります。
許可を下ろすのはUSCIS(米国移民局)ですからお役所仕事です。日本のお役所と同じように記入要項を守ってアプリケーションを作成しましょう。
アプリケーションの記入方法や細かい注意事項は大学が主催するワークショップで説明があります。以下では特に注意するべき点をご紹介します:
- Application Signature(7.a)のサインを枠にかからないようにサインする
- 写真は撮影所で撮影する
- Form G-1145に申し込む
- Application Instruction を印刷して漏れがないか確認する
- できるだけ早く書類を送る
Application Signature(7.a)のサインを枠にかからないようにサインする
Application Signatureとは申込書類(Form I-765)の4ページ 7.a.に記入する申込者のサインです。これはEADカードに映されるため規定幅以内でサインする必要があります。どうやら、これが枠にかかっているとNGだそうです。枠は結構小さいので、私は大きくなりがちなサインではなく、なるべく小さく、しかしはっきりとしたサインを書きました。
写真は撮影所で撮影する
アプリケーション用の写真サイズはパスポートサイズ(2インチ×2インチ)、正面を向いている必要がある、背景色、2週間以内に撮影したものである…など細かい規定があります。そのため、写真は撮影所で撮影するのをおすすめします。
アメリカには日本のような証明写真機はありません。CVSなどのファーマシー店内で行ってくれます。
日本の撮影所とは全く異なります。撮影してほしいと店員さんに声をかけると、撮影スポットで待っててと言われます。待っていると白いロールペーパーを天井からひっぱり、店員さんがデジカメで撮影してくれます。笑 15ドルで撮影完了です。
最近は自分で撮影した写真をパスポートサイズに印刷できるスマフォアプリがありますが、自分で作った写真が規定NGで却下されたら…そんな情けない話はありません。撮影料は高くないし、ファーマシーは24時間やっているところもありますので、お店に行きましょう。
Form G-1145に申し込む
Form G-1145とは書類がUSCISに届いた際にテキスト(電話番号宛のメッセージ)でお知らせしてくれるメールサービスです。
無事書類が届いたことを知れますし、書類が受理されるとレシートナンバーを教えてくれます。このレシートナンバーがあればUSCISのHPで定期的に進捗状況を確認することができます。費用は無料なのでぜひ申し込みをしましょう。
Application Instruction を印刷して漏れがないか確認する
大学のワークショップで申し込み書類を一覧にしたApplication Instructionをもらうはずなので、書類を送付する前に印刷し、2度は確認しましょう。
こういった確認作業が大きなミスを防ぐコツです。
できるだけ早く書類を送る
書類が揃ったら、すべての書類のコピーを取りましょう。私は念の為、写真とチェックのコピーも取りました。
郵送準備が整い次第できるだけ早く郵送しましょう。
大学によるとコロナ下では承認が下りるまで3~5ヶ月かかるということでした。もちろんコロナ下の状況は前代未聞で誰にも予測がつきません。しかしながら早ければ早いことに越したことはないです。
郵送する際はExpress Mail Serviceでトラッキングナンバーを控えられる方法で郵送しましょう。郵送方法も大学のインストラクションに載っているはずですので、熟読し、インストラクション通りに送りましょう。
立ちはだかる大きな壁
以上の方法を特に注意して、私はコロナパンデミックの最中でも通常通りの速さでEADカードを受け取ることができました。きちんと書類を提出すれば、OPTの許可を得ることに関して、新型コロナウイルスが大きく影響していることはないようです。
しかし、大きく影響しているのはOPTの職探しです。
前述したとおり失業者が増えている状況ですので、経営が苦しい企業は2,3人を解雇していました。そんな中で給料を払いながらトレーニーレベルのOPT学生を採用する企業は多くはありません。
また積極的に学生を採用している企業でも、アメリカ人を優先している可能性もあります。
日系企業の求人を扱うリクルーターによると、求人は例年に比べて激変しているようです。
OPTの職探しは例年に比べてかなり厳しいでしょう。
しかし、OPTの開始日を過ぎても90日間は職探しをすることはできますし、パンデミック下でも通常通り採用を続けている企業もたくさんあります。
もしかしたらダイレクトに希望の職に就けずとも、関連した仕事に就ける可能性もあります。
コロナパンデミック下で職探しをしている留学生は、今はとにかくやるべきことをやって、あきらめずにポジティブに過ごすことが良いでしょう。